■何もしなくても20代は終わっていく。だったら、でっかいことやってみるのもアリじゃない!?……馬を買う、とか。毎日仕事漬けで、気づけば趣味ナシ&女子力ゼロのなの加。このまま何も起こらず、花の20代が終わっていく……。そう思っていたけれど、ひょんなことから、人生初の競馬場に!そこで出くわしたのは、イケメン上司・黒瀬で……!?





 天皇賞、当たりましたか?私はPATの残高が無くて、見に回ってました。まあもし買ってたとしてもアエロリット1着付けで買ってたと思うので外れてたと思います。


 さて、というわけで七島佳那先生の『今度の恋は勝ちましょう』のご紹介です。そう、あらまし紹介にもあった通り、競馬を扱った女性向け漫画ですよ。競馬好きとしてはこれは見逃すわけにはいきません。しかも読んでみたら結構ガチめだったのでびっくり。


 物語の主人公は、競馬なんて全く知らないシステムエンジニアのなの加。文系キラキラ女子たちが次々と恋を成就させていくのを横目に、代わり映えのない日々を送っていました。そんなある日、最近推している俳優が、近所の東京競馬場でプレゼンターをする上に、抽選でクリアファイルがもらえるということで、気おくれしながらもひとり競馬場に乗り込むことに。初めての競馬場、想像していたよりも綺麗な場所で、女性向けのイベントなんかしていたりと、意外と楽しめていた中、ばったり職場の上司・黒瀬と鉢合わせます。競馬好きだという黒瀬に導かれるままに競馬を堪能したなの加は、上がったテンションのまま、黒瀬に冗談半分で誘われた一口馬主にチャレンジすることを決意するのですが……というストーリー。





馬主というとお金持ちのイメージがあると思いますが、あくまで一口。でも40口のやつなので、一口馬主でもかなりハイクラスだと思います。これまでのプチコミなら、普通に馬主やってる相手役とか出てきても違和感ないし、そっちの方が自然まである。




 そもそも一口馬主ってなんやねんという話からしますね。サラブレッドは非常に高額で、中央競馬で走っているような馬は安くても数百万円で、高ければ数千万、時には億という馬もいたりします。まさに金持ちの道楽であり、私たちのような一般人では到底手が出ません。馬主になるにも年収の規定があったりと、そもそも資格を得られないっていう。そんな一般人のために、合同で馬を持って馬主の夢を叶えましょうというのが、一口馬主。例えば1200万円の馬を400人で分けて、一口3万円で出資できる……みたいなやつです(もちろん賞金も山分けなので、リターンもその分少なくなります)。一口馬主にも色々あって、数万円からできるものもあれば数十万円から数百万円とプチリッチなものまで様々。とはいえ、デビュー前の仔馬を見出して、デビューまでの過程を見守り、デビューして勝利なんてすると、そりゃあもう喜びもひとしお。馬券を購入するという競馬の楽しみ方とはちょっと違った、「もう一つの競馬の楽しみ方」として最近人気が出てきています。まあこれも扱い的には投資商品であり、広義のギャンブルと言えなくも無いのですが。


 さて、こうして頼まれてもいないのに一口馬主のことを長々と書いたことからもわかる通り、競馬好きって競馬の話したいんですよ。競馬の話できる人に飢えている。本作に登場する黒瀬もそのタイプで、「競馬のことは詳しくないけれど興味あります」っていうなの加は、格好の相手だったというわけ。しかも馬券どころか一口馬主にまで興味を持ってくれるなんて、もはや天使です。読み始めた時は、まあ競馬場行ったりするぐらいだろう…とか思っていたのですが、競馬場の次に行くのは北海道の牧場ですからね。出資対象の馬を見に行くという、見学ツアー。のっけからお泊りですし、競馬という枠で見てもこれはかなりディープな部類という。





このイベントは競馬好きでもかなりディープ。てかいきなり調教師とかいうワードとか出てきて、読者はわかるのだろうか。




 ただ今のところ、黒瀬の目に映るなの加は、競馬仲間であり、恋愛対象としてはそこまで強く意識されていない模様です。当面のライバルは競走馬ということになるでしょうか。一方のなの加も、イケメン相手にドキドキはするものの、そこまで決定的なラブイベントも無く、恋はこれからといった感じ。1巻はむしろ、今まで全く足を踏み入れたことがなかった領域に進んでいくドキドキ感と、高い買い物をするという高揚感の方が先行しているといった感じ。競馬好きからするとこの過程だけでもわくわくできるんですが、これ競馬知らない女性からしたらどうなんですかね、大丈夫なんでしょうか。


 これまで競馬を扱いたいというチャレンジングなお話って、ちょこちょこと現れては消えていった印象なんですよね(シルフで連載してた『本日ハ、馬ナリ。』とかどうなったんだ)。競馬界も、若者や女性を取り込もうと、CMで若手俳優や女優を起用したりしてるんですが、イマイチ響いているのか疑問というのが正直なところ。そんな中、本作は馬券/ギャンブルから一歩進んだ「一口馬主」というテーマを用いたってのが新鮮で、「その手があったか」と目からうろこでした。確かにギャンブル的な側面を推すよりは、一頭の馬の成長の過程を真剣に追いかけることのできるこちらの方が、女性をはじめギャンブルに偏見を持つような人たちには刺さるんじゃないかな、と。JRAに直接お金が落ちるわけではないので、CMやキャンペーンを打つことはないでしょうが、こっちからアプローチしてった方が賢いのでは、と。DMMじゃなくて、メルカリが一口馬主はじめれば良かったんや。


 振り返ってみると、漫画のことよりも競馬とか一口馬主のことばっかり書いてる気がしますが、実際読んでいても、競馬好きのメンタリティが邪魔をして、純粋に物語を見つめられないという現象に苛まれてしまいました。もはや冷静でないので、どこまで恋愛物語としてこれを見れているのかよくわからないのですが、少なくとも競馬好きの私はこの試みにはめちゃめちゃ感動しましたし、全力で応援したいと思いました。



【感想まとめ】
競馬好きとしては応援せざるを得ない作品です。頑張って長期連載してほしい。



作品DATA
■著者:七島佳那
■出版社:小学館
■レーベル:フラワーコミックス
■掲載誌:プチコミ
■既刊1巻



ためし読み